三者顔合せから数日後、設計士(デザインスタジオ・カワムラ)の河村氏と一緒に『伊藤様の求める住宅』を建築する現地へと車を走らせました。
私が『伊藤様が求める住宅』について『性能』・『仕様』・『コスト』のバランスを考えながら運転していると、いつの間にか無口で難しい顔になっていました。
そんな私の姿を見て、河村氏は『設計の工夫で少しでもお客様の要望に近づけるよう考えていますから、大丈夫ですよ!』とさりげなく声をかけてくれました。
一般的な、設計事務所の設計士は『お客様の住まい』というよりも『私が設計した作品』といった考えを強調される方が多く、建物のデザインや素材にこだわりを持ちすぎて、逆にコストが掛かってしまう場合が多々あります。しかし河村氏の考えは、決められた予算の中で、いかにお客様が求めているものを表現できるかを第一に考えてくれるので、『伊藤様 が求める住宅』のような場合、とても頼りになるのです。
現地到着
現地に到着し早速、調査が始まりました。現地は主要道路から1キロぐらい入ったところの静かな住宅街の中にありました。すぐそばには公園やショッピングセンターもあり、とても環境の良い場所でした。
伊藤様は仕事で留守をしていましたが、玄関から奥様が出てきてくれて、現在お住まいになられている住宅の資料を見せてくれました。
現地の概要
- 敷地面積152.67平米(46.18坪)
- 敷地の間口12.7m
- 南側道路(4.5m) 敷地との高低さ(約1m)
- 第1種低層住居専用地域(建蔽率50%・容積率80%)
- 設備状況は都市ガス・上下水道完備という地域でした。
私は河村氏と上記の内容について確認をしたのち、すぐに付近の住宅や道路、ブロック塀などを調べました。
何故かと言いますと、それらを見るだけでも、この地域の地盤の良し悪しが推測できるからです。もちろん地盤が悪い場合は必ず地盤補強が必要になります。
新築住宅を計画する中で、この地盤補強工事の有無で建物にかけられる費用が大きく変わってしまいます。私が現地に到着して何よりも先に確認したいことなのです。
目視した結果、付近に大きな損傷等がある部分は見受けられませんでしたが、伊藤様の宅地が道路より1mほど上がっているところが気になりました。元々の地山であったのか、それとも盛土をしたのか、これによっても地盤の強度が異なるからです。
その他、水道メーターの蓋の古さや、付近で水道管を入れ替えた形跡がないかを確認しました。【古い水道管(鉛管)ですと、建物を新築する際に、道路から新しい管を入れ替えなければならない場合があるからです。これらも費用が掛かります。】
一通りの調査を終えて、二人は再び車に乗りました。帰りの車中で、河村氏は建物の配置やデザインのイメージを話し始めました。
『建物の配置は、南道路で、間口も13m近くあるので、現在、お住まいになられている建物と同じように東西に伸びた配置が好ましと思う。そして全面道路からも宅地が1mほど上がっているので日当たりに関しても全く問題なし。建物の高さについても、この道路との高低差が通行人からの視線を遮ることが出来るので、多少外階段の段数があっても高さは変えない方が良いと思う。そうすれば『伊藤様が求める住宅』の中の一つでもあるシンプルなデザインの外観も表現しやすいかな。』と言いました。
私も河村氏と同じイメージを考えていました。
その他にも現在の建物の配置に近い方が、伊藤様家とご近所の関係も悪くなることも考えにくく、これからも変わらないお付き合いが出来ること。また、付近の住宅は凹凸のある家が多いので、シンプルデザインの家にすれば、逆に目立ってくれるとも感じました。